研究概要 |
Tリンパ球へ抗原を提示する代表的な樹状細胞としてはランゲルハンス細胞(LC)と指状嵌入細胞(IDC)の2種類がある。本研究は,LCとIDCの相違点を検索し,免疫学的特性を究明した上で,樹状細胞由来の疾病であるhistiocytosis Xの本態を追究ことを目的とした。 1.主要臓器及び組織内抗原提示細胞の分布に関する研究:電顕・免疫電顕及び免疫染色・免疫再染色よりS-100陽性・CD1a陽性・Birbeck顆粒(有)の細胞はLCであり,S-100陽性・CD1a陰性・Birbeck顆粒(無)の細胞はIDCであることを明らかにした。IDCは全身のリンパ・網内系組織に広く分布するが,LCは扁平上皮組織及び扁平上皮に直接灌流するリンパ節に存在していることが明確になった。(日網内系会誌34;1994,臨免疫 26;1994,細胞 26;1994,血液病学 第2版;1995,Biotechnic & Histochemistry 70;1995,Lymphoreticular Cells and Diseases;1995,Dendritic Cells 6;1996) 2.実験的扁平上皮化生組織内樹状細胞の動態に関する研究:ビタミンA欠乏によりラット気管及び膀胱に誘発させた扁平上皮化生組織及び所属リンパ節内LCの動態を検索した。LCの成熟は,扁平上皮化生組織の進展に対応し,ケラチノサイトがBirbeck顆粒の成因とLCの形態及び数的変動に影響を及ぼすことを明らかにした。(日網内系会誌 36;1996,第7回日本樹状細胞研究会;1996,Lymphoreticular Cells and Diseases;1994,Dendritic Cells 5;1995) 3.皮膚病性リンパ節症及びhistiocytosis Xに関する研究:皮膚病性リンパ節症のT領域に存在する樹状細胞の大部分は,増殖能力が極めて低いLCであることを明らかにした。このLCは皮膚から表在リンパ節に移行してきたものと推測した。Histiocytosis Xの樹状細胞は高い増殖能と表面マーカーを逸脱した免疫学的特性を有するLCであることを明確にし,その本能はLCの反応性異常増殖疾患であると考察した。(病理と臨 臨増12;1994,日網内系会誌34;1994,日臨細胞会誌33;1994,化療の領域12;1996,Dendritic Cells 4;1994,Lymphoreticular Cells and Diseases; 1994,Dendritic Cells in Fundamental and Clinical Imunology 2; 1995,Pathology International 46; 1996) 4.皮膚病性リンパ節症のモデル動物に関する研究:いしばしヘアレスラットの表皮はヒトの面皰類似の病変を呈し,多数のLCが認められ,腫大した表在リンパ節にもLCが出現していた。このラットは,ヒトの皮膚病性リンパ節症に極めて類似した病態を示すことよりそのモデル動物として,あるいはケラチノサイトの増殖とLCの成熟・移動を観察する上でも有用であると考えた。(第85回日病理総会;1996,第36回日網内系総会1996,4th International Workshop on Dendritic Cells;1996)
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