研究概要 |
種々の軟部腫瘍組織の病理組織学的検索,細胞培養,染色体分析および分子生物学的分析を行い,次の成績を得た。 (1)類上皮肉腫(epithelioid sarcoma)の染色体分析によって,新たな染色体異常der (22) t (18 ; 22) (q11 ; p11.2)を発見した。更に18番染色体と22番染色体に特異的なプローブを用いて,chromosome painting (fluorescence in situ hybridiza-tion ; FISH)を施行し,転座を確認した。この成果をまとめた論文はCancer Genetics and Cytogeneticsにacceptされて印刷中である。 (2)未分化な小円形細胞腫瘍であるprimitive neuroectodermal tumor (PNET)およびEwing肉腫について細胞培養および染色体分析を行った。特に腎原発のPNETについては初めてchromosome paintingとRT-PCRを行い,特異的な転座t (11 ; 22) (q24 ; q12)を確認した。これらの成績の一部をまとめた論文はPathology Internationalにacceptされて印刷中である。RT-PCRなどの分子病理学的検索については別の論文にまとめ,現在Cancerに投稿中である。 (3)滑膜肉腫は主として四肢の軟部組織に生じ,特異的な染色体転座t (X ; 18) (p11.2 ; q11.2)を示す。今回私どもは初めて滑膜肉腫が稀には前立腺にも生じうることを,前記の特異的な転座を検出することにより証明した。 (4)近年,一部の低悪性度軟部腫瘍で余剰環状染色体supernumerary ring chromosomeが出現することが注目されている。私どもは多数例の軟部組織腫瘍の染色体分析を行い,余剰環状染色体の出現する腫瘍の種類と臨床病理像を検討し。本研究で検索した骨軟部腫瘍72例のうち余剰環状染色体が検出されたのは,高分化脂肪肉腫,軽度の異型性を示す筋肉内脂肪腫および隆起性皮膚線維肉腫のみであった。これらの成績から本染色体異常が低悪性度ないし良悪性の境界病変に特徴的であることが推測された。
|