研究概要 |
本研究は軟部腫瘍の本態,生物学的特性および細胞遺伝学的特徴を解明し,診断の精度向上に役立つ基礎的なデータを得ることを目的とする。平成8年度は種々の軟部腫瘍組織の病理組織学的検索,細胞培養,染色体分析および分子生物学的分析を行い,次の成績を得た。 (1)最近一部の低悪性度軟部腫瘍で余剰環状染色体supernumerary ring chromosomeが出現することが注目されているが、私どもは103例の軟部組織腫瘍の染色体分析を行い,高分化脂肪肉腫,筋肉内異型脂肪腫および隆起性皮膚線維肉腫に余剰環状染色体を検出し、この染色体異常が低悪性度ないし良悪性の境界病変に特徴的であることを証明した。 (2)類上皮肉腫の染色体分析およびchromosome painting(fluorescence in situ hybridiza-tion;FISH)を施行し,新たな染色体異常der(22)t(18;22)(q11;p11.2)を発見した。この成果はCancer Genetics and Cytogenetics 1996;91:46-52に掲載された。 (3)未分化な小円形細胞腫瘍であるprimitive neuroectodermal tumor(PNET)およびEwing肉腫について細胞培養および染色体分析を行った。特に腎原発のPNETについては初めてchromosome paintingとRT-PCRを行い,特異的な転座t(11;22)(q24;q12)を確認した。これらの成績の一部はPathology International 1996,46:292-297に掲載された。また別の1例を加えたRT-PCRなどの分子病理学的検索についてはDiagnostic Molecular Pathology(Am J Surg Pathol,Part B)にacceptされた。
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