研究概要 |
悪性リンパ腫体系化の一環として、当該期間内にT/NK細胞腫瘍のみならずB細胞腫瘍まで拡大した。B細胞腫瘍では節性のマントル細胞リンパ腫、節外性の粘膜関連リンパ組織型リンパ腫、T/NK細胞腫瘍ではCD56陽性血管中心性リンパ腫と鼻咽頭領域T/NK細胞リンパ腫を中心として解析を試みた。マントル細胞リンパ腫でのCylin D1の発現を分子生物学的および抗Cylin D1抗体を用いた免疫組織科学的手法により評価し、RNAレベルでの過剰発現と核陽性所見が有為に相関することを明らかにした。さらにリンパ腫400例以上についても免疫組織学的に検討し、核陽性例がマントル細胞リンパ腫にほぼ限定されることを見出した。また、胃原発リンパ腫80例を粘膜関連リンパ組織型リンパ腫を中心として臨床病理学的に検討を加え、単に組織像だけではなく臨床病態においても明確な特徴を示す 4群に大別し得ることを明らかにした。また、この群別はp53,bc1-2の発現頻度と相関した。さらにリンパ腫全体におけるCD56陽性リンパ腫の頻度を明らかにし、その多くがNK細胞由来の可能性があり、一部の症例ではEpstein-Barr virus(EBV)が関与することを示した。現在、EBVが高率に関与する鼻咽頭領域T/NK細胞性リンパ腫についても検討を進めつつある。本研究により日常診断のレベルで分子病理学的腫瘍単位とも見做し得る Cyclin D1過剰発現リンパ腫の把握が可能となった。その臨床病理学的特徴と意義については幾つかの不明な点があり、今後の早急な解析が必要性である。また、胃原発リンパ腫およびNK細胞リンパ腫の臨床病理学的特徴の解明は今後の分子病理学的、細菌学的研究における基盤となるものと考えられた。また、本研究の過程で悪性リンパ腫の周辺に位置するいわゆる境界領域リンパ増殖病変の詳細な解析の必要性が痛感され、次年度以降に鋭意検討を加える予定である。
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