研究概要 |
メサンギウム細胞の機能を制御する因子のうち血管内皮細胞と細胞外基質に焦点を当てて研究を進めてきた。前者についてはラット大動脈内皮細胞の培養法を確立し、ラット腎糸球体メサンギウム細胞との混合培養系で検討している。その結果、血管内皮細胞がメサンギウム細胞増殖を制御(抑制)しており、両細胞間の物理的接触が必要であることが再確認された。またラット・メサンギウム細胞表面上に存在するThy-1分子が、一種の接着分子(細胞間、細胞-基質間)であるという証拠が蓄積しつつある。またThy-1分子を認識する2種の単クローン抗体によりその分子の細胞上の分布、この分子を介するシグナル伝達機構についても明らかになりつつある(論文投稿中)。細胞外基質に関する研究では、コラーゲン・タイプI,III,IV,Vの相補的DNA(cDNA)を合成し、mRNAレベルでの各種コラーゲンの発現を検討できる段階にある。 血管内皮細胞と メサンギウム細胞の細胞間相互作用を検討するにはヒト臍帯静脈内皮細胞とラット・メサンギウム細胞を用いてきた(Am.J.Pathol.139:949,1991)。同種の細胞を使用するのが理想的であり、昨年度までの本科学研究費の補助によりラット大動脈内皮細胞の培養法を確立した意義は大きい(論文印刷中)。腎糸球体血管内皮細胞は器質的に動脈系の性状を保有している。ラット腎糸球血管内皮細胞の培養法は見つかっていないので、この細胞を用いより良い実験系が組める。またメサンギム細胞の接着分子については、細胞外基質との関連で報告されているが我々以外に内皮細胞との接着について注目した仕事は少ない(論文作製中)。
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