研究概要 |
WKYラットに抗糸球体基底膜抗体を投与して起きる糸球体腎炎モデルでCD8陽性リンパ球を介したマクロファージの集積機序に関与する接着分子やサイトカインと糸球体障害因子を追求した。その結果、WKYラットに抗糸球体基底膜抗体を投与すると糸球体内皮細胞の接着分子ICAM-1のmRNAおよび蛋白の発現が高まり、CD8陽性リンパ球やマイクロファージが糸球体に集積するのに接着分子ICAM-1の発現が関与していることが明らかになった。このICAM-1の発現の促進はCD8陽性リンパ球を減少させておいたWKYラットでは起きず、サイトカインのTNF-αの発現ど平行していたことから、CD8陽性リンパ球によるTNF-αの発現、または誘導がICAM-1の発現の促進に関与していると考えられた。一方、ICAM-1と接着するCD8陽性リンパ球とマクロファージの接着分子LFA-1はMIP1α、MIP1β、MCP-1などのケモカインで活性化されると共に、それらの白血球遊走活性によりCD8陽性リンパ球とマクロファージが糸球体に集積すると推定された。また、糸球体に集積しているリンパ球のT細胞受容体VβをRT-PCRで検索した結果、Vβ2,8.5,19をもつTリンパ球の関与が示唆され、障害因子としては細胞傷害性Tリンパ球やナチュラルキラー細胞の主たる細胞傷害因子であるperforinが関与していることが明かになった。これらのことからこのモデルでは細胞傷害性Tリンパ球やナチュラルキラー細胞がCD8陽性リンパ球として関与していると考えられた。
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