研究概要 |
糸球体腎炎の障害機序にはマクロファージが重要な役割を演ずるとされ、とりわけ、上皮細胞と並んで、いわゆる半月体形成に関与することが示唆されている。また、メサンギウム細胞も生理機能がマクロファージと類似することなどから、糸球体腎炎でのマクロファージの動態には不明な点が多い。さらに、マクロファージの分化と活性化にはサイトカインをはじめとする生理活性物質が大きく関与していることが知られているが、糸球体腎炎でのマクロファージへの作用機序も未詳である。 報告者らは糸球体培養技術を用いて腎固有細胞と糸球体内のマクロファージとの関係を詳細に解析した。その結果、糸球体腎炎で出現するマクロファージの起源に大きな示唆を与える新事実を得た。すなわち、培養の経過に伴い、糸球体上皮細胞は発達したファゴゾーム,ライソゾーム,ゴルジ装置およびラッフルを形成し、非特異的エステラーゼや酸性ホスファターゼなどの酵素およびED-1対応抗原やIa抗原,CD11を発現させ、非特異的貧食能や活性酸素の放出などの機能も獲得した。さらに、この変化はCSFにより促進された。また、変化した細胞は糸球体内の常在マクロファージとは明確に区別された。 糸球体上皮細胞の“変化(metaplastic change)"は生物学的に重要な発見であることはもとより、糸球体腎炎でのマクロファージの起源とその障害機構の解明に新たな示唆を与えるものである。また、CSFによるその制御の可能性は治療法の確立に向けての糸口となることから、大きな意味をもつと思われる。 現在、さらにそれらの細胞を抗原としてモノクローナル抗体の作成を試み、モデル腎炎での解析と最終的に活性型ビタミンD_3とサイトカインによる変化の制御法から、治療法を確立すべく、研究を推進している。
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