研究概要 |
〔背景と目的〕ヒトIgA腎炎の小児期および成人の組織像の観察から,糸球体障害に年令差の存在することがあり,腎炎の進展修復にも差のあることが示唆された。従来腎炎の実験モデルは多くは成熟動物を用いており,加令による差異は殆んど報告されていない。免疫複合体型糸球体腎炎のモデルとして用いてきた血清病での加令による組織障害の差を解析することを目的に以下の実験を行った。 〔実験方法〕フィッシャー系ラットを用いて荵起型の免疫複合体腎炎として実験的血清病を以下の各群に発症させ,組織学的にその差を解析する。1群 乳ばなれしたばかりの幼若群,2群 10週令成熟ラット群 3群 30週令をこえた老令群の3群について卵白アルブミンの予備感作ののち、約1ヶ月後よりの連続腹腔内感作により腎炎を荵起する。これら腎炎の最盛期,回復期について光顕,電顕組織学,免疫組織化学,および細腔外基質外基質の変化について組織化学的検討を行う。 〔結果と考察〕2群では最盛期にはマクロファージの集積のめだつ,また基質の障害(メサンギオリシス,メンブラノリシス)のめだつ増殖性腎炎がおこり,一部の硬化巣を残りながらほゞもとの糸球体構造に復帰する。一方1群では2群でめだった免疫複合体のメサンギウム沈着が少なくむしろ糸球体上皮下にめだち膜性腎炎様を呈する。3群については現在実験が進行中である。1群の結果については幼若ラットにおける免疫下では抗原感作の結果、沈降性の低い,従ってサイズの小さい免疫複合体ができ,糸球体末梢に沈着し膜型になった可能性がある。
|