1.ERp61がProtein disulphide isomerase(PDI)と同様なredox活性を持つか調べた。glutathione存在下でinsulinのS-S結合を解離させ遊離peptidesの凝集に伴う濁度変化で解析した結果、ERp61はPDIの約5分の1ではあるが明らかなredox活性を有することが判明した。 2.S-S結合を含む蛋白質の合成の盛んな細胞と少ない細胞のERp61の発現について、蛍光抗体法、Western blotting、Northern blottingで調べた。IgG産生hybridomaより非産生株、κ鎖産生株、IgG産生株をcloningしてIgG産生とERp61の発現の相関を調べた結果、完全なIgGを産生している株におけるERp61の発現は非産生株やκ鎖のみを産生する株より数倍高いことが明らかとなった。また、F9 mouse teratocarcinoma cellsを分化させ、 ERp61の発現の変化について調べた。F9 cellsの分化に伴い、S-S結合を多く含むIV型collagenやlamininの産生が誘導されるのと同時にERp61の発現も顕著に誘導された。 3.ratの各組織について蛍光抗体二重染色法でERp61とPDIの組織分布の相違について解析した。ERp61とPDIはともに種々の細胞に存在したが、甲状腺濾胞上皮、気管支腺細胞、胃主細胞、などにはどちらも多量に検出された。一方、リンパ節、脾臓、消化管固有層の形質細胞にはERp61が多く存在したが、PDIは乏しかった。膵ランゲルハンス島、消化管の粘液産生細胞、下垂体の一部の細胞でも同様な結果が得られた。精細管においていはERp61が内方のより分化した細胞に多くみられたがPDIは基底膜近くの細胞に多く認められた。 以上の結果からERp61はPDIと同様なredox活性を有し、IgGなどの蛋白質のS-S結合の形成に関わっていることが示唆された。また、PDIとは一部異なる組織分布を示すことから、それぞれの酵素の基質となる蛋白質に特異性があることが推測された。
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