1.微小管の構成成分であるチュブリンに対する抗体と小胞体内のみに局在するカルシウム貯蔵蛋白のカルレチクリンに対する抗体を用い、肝癌細胞(PLC/PRF/5)の二重染色を行った。小胞体の分布は微小管の分布と一致しており、微小管の脱重合により小胞体の細胞内配列が変化した。微小管モーター蛋白のひとつである細胞質ダイニンを染色したところ細胞室が瀰漫性に染色され、小胞体を溶解する界面活性剤処理を行ったところ染色は消失した。ウエスタンブロット法により、細胞ホモジネートを分画し、その小胞体分画に多量の細胞質ダイニンが存在することを確認した。さらに、培養肝細胞のホモジネートをタクソ-ルで処理し、微小管と小胞体の再構成複合体を形成させた。小胞体、細胞質ダイニンともATP処理により、微小管から遊離することが確認された。以上より、細胞質ダイニンは小胞体に結合し、微小管を介して小胞体の細胞内局在決定に関与していると考えられる。 2.MAP・4蛋白の細胞内機能を知るために、細胞内ウシ副腎由来のMAP・4および細菌で発現させたMAP・4の末端側とN末端側の断片を細胞内に顕微注射し、細胞内の微小管の変化を観察した。肝細胞では微小管数が多く観察が困難であったため、腎上皮細胞由来のPtK2細胞を用いて検討した。MAP・4とC末端側の断片の顕微注射は、微小管の増加と一部で束状の配列を認め、これらの蛋白が微小管の制御に関連していることを明かとなった。 3.位相差像の細胞形態の変化はなく、小器官の分布に変化が生じる培養条件として、細胞外pHを6.6に下げたとき、ゴルジ体の崩壊が処理16時間後に生じることを見いだした。この変化は可逆的で、pHをあげることによりもとの配置に戻った。また、このときには小胞体、微小管の配置には影響が現れなかった。さらに、細胞質ダイニンは崩壊したゴルジ体膜に結合したままで、この現象がダイニンのゴルジ膜の遊離によるものではなかった。
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