1細胞への遺伝子導入:培養細胞の中でChinese Hamster ovary(CHO)cellを用いることにより、効率よく遺伝子導入が行われた。すなわち、インテグリンα_4あるいはβ_1両方のサブユニットの遺伝子導入が順調に行われ、十分な発現のあることがフローサイトメトリー法および免疫沈降法により確認された。また、CHO細胞はインテグリンの中でα5β1しか発現しておらず、解析がしやすい系であることが認められた。 2細胞の生物学的解析:遺伝子導入された細胞のうちインテグリンα_4鎖のトランスフェクタントについて、リガンドであるVCAM-1およびフィブロネクチンCS-1タン白に対する接着実験を行なった。その結果、発現したインテグリンα_4β_1はそれらリガンドに接着し、十分な機能があることを確認した。 3転移実験:インテグリンα_4のトランフフェクタントについてヌードマウスを使用し詳細な解析を行なった。その結果、transfectionしていない母細胞のCHO細胞では肺転移のみしか見られなかったのに大して、transfectantは高率に骨に天使を認めた。その他の臓器としては、リンパ節、副腎に転移を認めることがあり、その評価は検討中である。骨転移は組織学的に骨破壊性に周囲に浸潤しているもののほか、骨髄のみに少数のmicroscopicな転移が見られることから、骨髄から起こると考えられた。また、マウスの中には脊椎に転移し、周囲の神経根を圧迫して、下肢の麻痺を来す例がかなり見られた。 臓器特異的な転移を単一の分子で説明した研究は今まで見られず、初めてのものとして注目される。また、骨転移のモデルはあまり見られず、この系を使って病態の解析、治療への応用が期待される。
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