(目的)ホメオボックス遺伝子は動物胚で活発に発現しているのみならず、成熟動物の様々な組織でも発現し、細胞の分化及び増殖に重要な役割を果たしていると考えられている。我々はHOXD3ホメオボックス遺伝子の構造を決定し、その発現が赤芽球系白血病細胞HEL及びK562にあることを見出した。更に、発現ベクターpMAMneoにHOXD3遺伝子をセンス方向とアンチセンス方向に組込んでHEL細胞に遺伝子導入し、親HEL細胞と比較してHOXD3を過剰発現しているセンスクローンと発現低下を示すアンチセンスクローンを得た。これらのクローンの間で細胞と細胞及び細胞と細胞外基質の接着性に差が見出されたので、いくつかの細胞接着因子の発現を解析した。(結果及び考察)ノザンブロッティング法によりセンスクローンではインテグリンβ3のmRNAレベルが上昇しているのが観察され、更にFACS解析により細胞表面のGPIIbIIIa(インテグリンαIIbβ3)のタンパクレベルが上昇していることが判明した。この結果は、センスクローンにおけるフィブロネクチンに対する接着性の増大と一致するモノである。更に、RT-PCR法による解析によってアンチセンスクローン特異的にR-カドヘリンの発現が認められた。以上の結果は、HOXD3の発現が細胞接着因子の発現を制御する可能性を示唆するものであり、組織の構築或いは癌細胞の転移という点で興味が持たれる。
|