ヒト内在性レトロウイルス遺伝子は染色DNAに組み込まれており通常の遺伝子と同様に転写因子が関与して発現調節が行なわれていると考えられる。腫瘍細胞において活性化される可能性が存在するヒト内在性レトロウイルス様遺伝子Clone 4-1のLTR領域のプロモーター活性を解析した。ヒトTリンパ腫細胞株であるJurkat細胞を用いて解析した。プロモーター活性の定量化はルシフェラーゼをレポーター遺伝子とした方法を用いた。1241bpのClone 4-1 LTRを用いて10個のfragmentを作製して解析に用いた。その結果強いプロモーター活性を示す184bpのfragmentと発現抑制的に作用する242bpのfragmentを検出した。さらにこれらのDNA fragmentへの蛋白結合を2種類の方法gel shift assay法およびin vivo foot printin法により解析した。gel shift assay法の結果からClone 4-1 LTRに結合する蛋白の特異的な結合が観察された。これは転写に関与する蛋白の存在を示唆している。Jurkat細胞の核から抽出した核蛋白が結合したClone 4-1のLTRをPCRを用いて解析するin vivo foot printingの結果からはLTRを介した発現制御は複数のDNA配列に対し複数の種類の因子の結合によりなされていることが推定された。本研究からはヒト内在性レトロウイルスのLTRも他のレトロウイルスと同様に強いプロモーター活性を持つことが示された。
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