研究概要 |
1.DMH誘発マウス大腸腫瘍182例について、8染色体上の19個のSSLPマーカーを用いて対立遺伝子欠失(LOH)の有無を検索した。その結果、APC,MCC,DCC遺伝子の存在する第18染色体に6例、それ以外の染色体上に8例と頻度は低いがLOHが検出された。第18染色体におけるLOHは、その大半がAPC,MCC,DCCを含む染色体全長にわたって同一アレルが欠失していることから、染色体不分離(及びその後の重複)によると思われる。 2.これらの腫瘍182例中61例にマイクロサテライト領域の不安定性(RER)が起きていることがLOH解析の過程で明らかになった。しかし、ヒトの場合と異なり、マウス大腸腫瘍におけるRERは大半が1カ所のみの異常で繰り返し配列長の変化の程度も小さかった。RERの頻度は各マーカーによって異なり、頻度が特に高いマーカーが幾つか認められたが、頻度と繰り返し配列の間には相関は認められなかった。 3.p53遺伝子の突然変異とLOHについて詳細に解析した結果、p53遺伝子の異常を有する腫瘍20例中8例において両方のアレルが突然変異あるいは突然変異と欠失により不活化していることが明らかになった。残りの腫瘍については変異アレルと正常アレルの両方の存在が示唆された。 Min-F1マウスにおける自然発生大腸・小腸腫瘍の発生に成功したことにより、DMH誘発腫瘍と自然発生腫瘍間における遺伝子異常の比較のための系を確率することができた。現在、腫瘍試料の収集を行っているところである。
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