実験的アレルギー性脳脊髄炎の発症には、中枢神経系に固有の抗原に対し特異的に反応する自己免疫性T細胞の活性化が本質的に必須であるが、活性化された自己免疫性T細胞が如何にしてin vivoでの細胞動態(fate)をたどるかに関する情報は知られていない。とりわけ実験的アレルギー性脳脊髄炎を含め、多くの自己免疫性疾患の再燃に関してこれが過去に活性化された自己免疫性T細胞の再活性によるものか、新たな自己免疫性クローンの出現に因るものであるのかを理解する事は本疾患の病因と病態を理解する上で極めて重要な問題であると考えられる。 本研究はこの点を鑑み、我々の確立した雄LEWラット由来、自己免疫性T細胞株、Phi-1(実験的アレルギー性脳脊髄炎起炎株)をドナーとして用い、雌LEWラットをレシピエントとして、養子受動免疫移入法により、アレルギー性脳脊髄炎を惹起。その後Y染色体上の性決定遺伝子:SRYに特異的なプライマーを用いたPCRを用いて経時的に循環血液中の自己免疫性T細胞株の存在の有無に関する解析を行った。結果、実験的アレルギー性脳脊髄炎発症後、1ヶ月までは一般循環血液中にその存在を認めるも、2〜3ヶ月を経過したものに関しては、その存在を確認する事はできなかった。これが単にY染色体遺伝子上のマイナー抗原:H-Yに関する免疫応答による免疫学的排除によるものであるのか、或いは、一般循環血液中以外の各組織への再分布に因るものであるを検討する為に、現在、一般循環血液中以外の組織に関して、検討中である。
|