数種の生物のプロテインキナーゼC、Ca/カルモジュリン依存性キナーゼなどの共通アミノ酸配列部をもとに作製したオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、マラリア原虫(Plasmodium yoelii)遺伝子のPCRを行ないPCR産物を得た。このPCR産物をプローブにしてPlasmodium yoelii遺伝子ライブラリーをスクリーニングして得られた遺伝子クローンについて遺伝子の全塩基配列を決定した。さらに本遺伝子のコードする蛋白質の一次構造を推定し、他種生物の種々の蛋白質燐酸化酵素との一次構造の差異を比較検討した。その結果本遺伝子はcAMP、およびcGMP依存性蛋白質燐酸化酵素、プロテインキナーゼC、Ca/カルモジュリン依存性キナーゼなどと非常によく似た一次構造を有する蛋白質をコードしていることが明かになったが、なかでもcAMP依存性蛋白質燐酸化酵素に最も類似していることが明かとなった。しかしその一次構造を哺乳類のcAMP依存性蛋白質燐酸化酵素の一次構造と比較したところ、本蛋白質燐酸化酵素は哺乳類のcAMP依存性蛋白質燐酸化酵素とはいくつかの重要なアミノ酸で置換が起こっていることがわかった。すなわち本蛋白質燐酸化酵素は哺乳類cAMP依存性蛋白質燐酸化酵素とは異なった性質を有している可能性が示唆された。そこでこの遺伝子の塩基配列をもとに2種類のプライマーを作製し、マラリア原虫のcDNAのPCRを行ない、本遺伝子のcDNAを増幅した。このcDNAを蛋白質発現ベクターに組み込み、大腸菌で本蛋白質を発現させた。現在発現した蛋白質につき、その酵素学的性質を、特に本蛋白質燐酸化酵素の活性化因子、阻害剤の効果を中心に検討中である。
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