平成6年度は、数種の生物のプロテインキナーゼC、Ca^<2+>/カルモジュリン依存性キナーゼIIなどの共通アミノ酸配列部をもとに作製したオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、マラリア原虫(Plasmodium yoelii)遺伝子のPCRを行ないPCR産物を得た。このPCR産物をプローブにしてPlasmodium yoelii遺伝子ライブラリーをスクリーニングして得られた遺伝子クローンについて遺伝子の全塩基配列を決定し、本遺伝子が蛋白質燐酸化酵素をコードする遺伝子であることを明かにした。平成7年度はこの蛋白質の一次構造を種々の蛋白質燐酸化酵素の一次構造と比較し、本蛋白質がCAMP依存性蛋白質燐酸化酵素であることを明かにした。さらにカルシウム依存性蛋白質燐酸化酵素を含む種々の燐酸化酵素のマラリア原虫寄生ステージ別発現について、ゲル内自己燐酸化法を用いて解析した。その結果少なくとも8種類存在するマラリア原虫(P. yoelii)の燐酸化酵素のうち、カルシウム依存性蛋白質燐酸化酵素は後期栄養体期から分裂体期に反応が増強することがわかった。一方、EGTA存在下で自己燐酸化が増強する燐酸化酵素は分裂体期から早期栄養体期に反応が増強することを明らかにした。また、マラリア原虫(P. faruciparum)のin vitroの培養系において、各種蛋白質燐酸化酵素阻害剤、活性化剤のマラリア原虫増殖におよぼす影響を調べたところ、おもに、カルシウム依存性蛋白質燐酸化酵素(プロテインキナーゼC、Ca^<2+>/カルモジュリン依存性キナーゼII)の阻害剤がマラリア原虫増強に阻害効果を発揮することを明らかにした。
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