研究概要 |
我々は,昨年度マンソン裂頭条虫擬充尾虫のESが活性化マクロファージの一酸化窒素合成酵素(iNOS)の遺伝子発現を抑制することを認めたが,今回このES中にはTNFα mRNAを発現させる因子とLPSによるTNFα mRNA発現を抑制する因子が存在することを見い出した。また,マクロファージの培養液中にESのみ加えてIP-10,KC,JEの3種のケモカインの遺伝子発現を検討したところ,3種のいずれのケモカインもmRNAの発現が認められ,IP-10とJEは6時間後がピークで,KCは1時間後がピークでその後漸減した。また,これらの遺伝子はLPSの作用で発現するため,LPS単独投与による遺伝子発現とLPSとESを同時に投与した場合の遺伝子発現を比較検討した。IP-10は,両方加えた場合にそれぞれの単独投与に比べて3時間後により強く発現したが,JEとKCについては,3時間後のLPSによる発現をESは抑制した。これらのことからES中にはマクロファージのTNFαのみならずケモカインの遺伝子の発現因子と抑制因子が存在することが推察された。そこでESをゲル濾過のカラムで分画し,マクロファージの培養液にLPSと同時に投与すると分子量のもっとも大きいF1分画がもっとも顕著にTNFαとKCの遺伝子発現を抑制した。また,マクロファージをIFN-γとLPSで活性化し,分画したESを加えるとやはりF1分画が最も顕著にNO_2^-産生を抑制したため,F1分画にiNOSの遺伝子発現抑制因子が存在すると推察された.
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