研究概要 |
1.マンソン裂頭条虫擬充尾虫をIFN-γとLPSで活性化したマウス腹腔マクロファージとin vitroで一緒に24時間培養すると,擬充尾虫はマクロファージのnitrite産生及び一酸化窒素合成酵素(iNOS)のmRNAの発現を抑制した.この擬充尾虫の培養上清(ES)を活性化マクロファージに添加するとマクロファージのnitrite産生及びiNOSのmRNAの発現が抑制された.この抑制効果はESの量と相関していた. 2.ESによるマクロファージのiNOSの遺伝子発現の抑制は,添加した3組の活性化因子(IFN-γとIL-2,IFN-γとTNF-α,IFN-γとLPS)のいずれの組み合わせでも認められた.ESの抑制効果はIFN-γとIL-2では70%で,IFN-γとTNF-αでは67%であり,これらの抑制率はIFN-γとLPSの45%より大きかった.また,nitriteの産生抑制と遺伝子発現の抑制率には相関が認められた.post-transcriptionalな抑制は顕著でなく,ESは主にmRNAの発現を抑制する因子と考えられた. ESによるマクロファージの遺伝子発現の抑制は,iNOSに特異的ではなく,LPSのみの添加によって1-6時間後に発現するケモカイン[gro/KC,monocyte chemotactic protein-1/JE]およびTNF-α,IL-6などの遺伝子発現を抑制することが明らかになった.これらの結果より,ES中の抑制因子の作用は活性化因子や遺伝子に特異的ではなく,主要なシグナル伝達のいずれかを阻害する因子であると推察された. NO donor drugsを用いたin vitroの実験では,擬充尾虫は産生されたNO単独では傷害作用は認められなかった.ES中の抑制因子の生理的意義は単なるiNOSの遺伝子発現の抑制ではなく,IFN-γまたはLPSによって誘導される免疫反応全般の抑制作用と推察された.
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