研究概要 |
寄生虫の中間宿主となる貝Biomphalaria glabrataの生体防御を担っている血球細胞の表面構造を調べるために,糖結合特異性を持ち蛍光色素で標識されたレクチン21種で蛍光染色を行った。その結果,侵入してきた異物排除に関与する顆粒細胞(granulocyte)は表面にα-結合マンノース,そして少顆粒細胞(hyalinocyte)はα-結合マンノースとN-アセチルグルコサミンを持っていた。中間宿主貝の生体防御を担っている血球細胞群の解析をフローサイトメーターを用いて試みた。非感染貝7・10および15mmの血球細胞について、粒子のサイズを反映する前方散乱光と内部構造を反映する側方散乱光を測定した。7mm貝では前方散乱光が強く側方散乱光が弱い細胞群と前方散乱光が弱く側方散乱光が強い細胞群が認められたが、貝のサイズの増加に伴って、後者の細胞群は減少し、15mmの貝ではほとんどが前方散乱光が強く側方散乱光が弱い細胞群であった。棘口吸虫科の寄生虫Echinostoma paraensei感染1週間後の7mm貝の血球細胞について同様の測定を行なったところ、前方散乱光が強く側方散乱光が弱い細胞群のみであった。寄生虫の感染および寄生虫抽出物が宿主貝の血球細胞の核DNA量に及ぼす影響をフローサイトメーターを用いて測定した。感染貝では非感染貝に比べ核DNA量が少ない細胞の増加が見られた。非感染貝の血球細胞に寄生虫の抽出物を加えると,同様の変化が見られた。 以上の結果から,寄生虫の感染および寄生虫抽出物は寄生貝の血球細胞のサイズ・内部構造・核DNA量(細胞周期)に影響を与えることが明らかになった。
|