1.トキソプラズマ(Tp)DNAポリメラーゼ(DNApol)の生化学的研究:Tpの強毒株(RH)DNApol活性の性状については先に明らかにしたが、Tpにはマウスに対する病原性を異にする種々の株が存在する。そこで、弱毒株のDNApol活性を強毒株のそれと比較しつつ検討した。弱毒株としてはME49を用いた。両株由来粗抽出液中のDNApol活性を比較したところ、虫体当たりの活性はRHのほうが、ME49に比し2.5倍高い値であった。Mg^<2+>イオンはME49DNApol活性の発現に必須であり、また、高濃度KC1によってその活性は著しく抑制された。高等動物DNApolの抑制剤の影響のついて調べたところ、ME49DNApol活性はN-ethylmaleimide、ddTTPによって抑制されたが、aphidicolinに対してはほとんど抑制されず、これらの抑制剤に対する感受性にRHとの違いは認められなかった。以上の結果から、検出された両株DNApol活性は、その性状はほぼ同様であったが、虫体当りの活性は強毒株の方が高いことが示唆された。2.TpDNApolαのgenomicDNAのクローニング:TpDNApolαgenomic DNAのクローニングを試みた。DNApolα遺伝子の保存領域に相当するプライマーを合成し、これを用いてTp genomicライブラリーをスクリーニングし、陽性クローンを得た。insertDNAのサイズは12kbpであり、これがTp由来であることをsouthern hybridizationにより確認した。このinsertDNAをSacIで切断したところ、6つのDNA断片に分かれた。hybridizationをおこなった結果、このうち3kbpの断片がプローブと反応した。シークエンスを行うため、これらのDNA断片をpUC18にサブクローニングした。3.Tp DNApolδのcDNAのクローニング:TpDNApolδcDNAのクローニングを試みた。DNApolδ遺伝子の保存領域RIIからRIに相当する領域のプライマーを合成し、これを用いてRT-PCRを行い、cDNA断片を得た。これをシークエンスした結果、polσ遺伝子の一部であることを確認した。これをプローブとしてTpcDNAライブラリーをスクリーニングし、2つの陽性クローンを得た。これらをpBluescriptSKにサブクローニングし、シークエンスを行うためdeletion mutantを作製した。4.TP DNApolδ断片の大腸菌における発現:抗体を作製するため、スクリーニングに用いた458bpのpolδDNA断片を発現ベクターpGEX-2Tと連結後、大腸菌に導入し、glutathione S-transferaseとの融合蛋白質として発現させた。
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