ツツガムシと恙虫病リケッチアの共生関係の実験生物学的解析

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06670275
• 研究機関: 新潟薬科大学
• 研究代表者: 浦上 弘 新潟薬科大学, 薬学部, 助教授 (80139732)
• キーワード: Leptotrombidium / Orientiia tsutsugamushi / rickettsia / 細胞内共生 / 垂直伝播 / 性比 / 血清型 / モノクローナル抗体

研究概要

Leptotrombidium fletcheri、L.arenicolaのOrientia tsutsugamushi(Ot)共生系では雄がほとんど生じない。その理由を探るため、抗生物質を投与したマウスにOt共生L.fletcheri(世代P)を吸着させOtを排除し飼育したところ、P、F1ではメスのみ生じたが、F2では雄が98%と性比は大きく逆転した。これよりOt共生系で雄が生じないのはRt共生の影響であること、幼虫の時点で産む子の性が決定していることが示唆された。その後F5まで観察を続けたところ、雄の割合は89、81、89%であった。比較のため抗生物質をOt非共生L.fletcheriに投与した場合、性比に変化はなくほぼ1:1であった。これらの事実はOtが排除されたのち数代以上にわたって宿主の性比に異常が生じることを示すものかもしれない。
昨年度開発した蛍光抗体法でツツガムシ中のOtの血清型を標準5型に特異的なモノクローナル抗体により調べた。それぞれ数百個体のツツガムシを用いた結果、L.fletcheri中のOtは抗Kato型抗体4種中2種に、L.pallidum、L.arenicola中のOtは抗Karp型抗体3種中1種とよく反応し、他の血清型に特異的な抗体とは反応せず、3種それぞれに1血清型のOtが共生していることが判明した。その反応性はそれぞれのツツガムシから培養細胞を用いて分離したOtの反応性と一致していた。これらの観察は、1系統、1個体のOt共生ツツガムシに複数の血清型のOtが共生しているという従来の知見と相反するものである。
なお、我々は媒介動物の相違、遺伝子の相同性などの観点からRickettsia tsutsugamushiを新たな属に分類しOrientia tsutsugamushiと呼ぶことを提唱した。

研究成果

• [文献書誌] Tamura, A., Ohashi, N., Urakami, H., Miyamura, S.: "Classification of Rickettsia tsutsugamushi in a New Genus, Orientia gen. Nov., as Orientia tsutsugamushi comb. nov." Intern. J. System. Bacteriol.45. 589-591 (1995)
• [文献書誌] 浦上 弘、多村 憲: "恙虫病リケッチアOrientia tsutsugamushiと宿主ツツガムシとの共生関係について" 日本細菌学雑誌. (印刷中).
• [文献書誌] Takahashi, M. Urakami, H. et al.: "Occurrence of high ratio of males after introduction of minocycline in a colony of Leptotrombidium fletcheri infected with Rickettsia tsutsugamushi." Europ. J. Epidemiol.(印刷中).
• [文献書誌] Kawamura, A., Jr., Tanaka, H. Tamura, A., eds.: "Tsutsugamushi Disease" University of Tokyo Press, 362 (1995)