研究概要 |
本研究はマラリアの病因の主要なサイクルとなる赤血球内増殖の機序を、本原虫の増殖に不可欠とされる血清中の因子との関連から解析することを目的とするものである。糸口としてはまず、熱帯熱マラリア原虫(P.f)の無血清培地を用いた培養法の開発を試みた結果、ヒトやマウスのミエローマ細胞等広範な細胞増殖促進因子として開発された市販のDaigo's GF21を用いた無血清培地を開発することができた。このDaigo's GF21は、いくつかの細胞増殖促進因子の混合物であることから、必須となる因子の同定を試みた結果、成牛血清由来の分画のみがP.f増殖促進に有効であることが判明した。また本増殖因子は基礎培地としてDaigo's Tを用いた時のみ効果を発揮し、ヒト血清添加培地の基礎培地として用いられているRPMI 1640では無効であったことから、本増殖因子がP.f増殖を促すために必須となる低分子量物質の同定を試みた。その結果、比較的高濃度のhypoxanthineであることが明らかになった。更に、adenine, guanine, inosine,NAD, NADH等広範なものにhypoxanthineと同様な効果が認められることが判明した。マラリア原虫体内に取り込みが報告されている ethanolamineやorotic acidには活性は認められず、この効果は取り込みとは一致していないと考えられた。こうした物質の作用機序について更に検討を行っている。
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