研究対象である緑膿菌由来Extended-spectrum(ESP) β-lactamaseをコードする遺伝子を、クローニングし解析したところ以下の結果を得た。 1.広宿主域ベクタープラスミドにつなぎ、各種の細菌に入れたところ、Serratia marcescensをはじめとする種々の日和見感染菌において酵素活性が検出され、ESP β-lactamase遺伝子保有菌は、カルバペネム、第三世代セフェム、その他多くのβ-ラクタム剤に耐性化した。すなわちこの緑膿菌由来の遺伝子は、種々の菌種で発現し、多くのβ-ラクタム剤を水解することが分かった。 2.ESP β-lactamase遺伝子の塩基配列は、報告にあるSerratia marcescensの染色体性β-lactamase遺伝子の塩基配列と100%一致していた。 3.ESP β-lactamase遺伝子を含むインテグロン構造の塩基配列は、報告にある塩基配列とほぼ一致していたが異なる特徴としては、インテグラーゼ遺伝子部分の一塩基の置換、β-lactamase遺伝子末端の59bpコンセンサス配列における不一致が認められた。また機能不明の塩基配列の挿入も認められた。 4.緑膿菌由来インテグロンの、既知インテグロンとの塩基配列における不一致に関しては、インテグラーゼ遺伝子ではアミノ酸配列では一致しており、コンセンサス配列では類似の三次構造をとりうることから、機能はあると推定される。 以上のように、緑膿菌より得たESP β-lactamase遺伝子がインテグロンに外来性遺伝子として挿入されている構造をとっていることは、他の菌種にも類似のESP β-lactamase遺伝子が存在しうることを示唆する。
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