緑膿菌において、抗緑膿菌β-lactam剤に対する多剤耐性化の要因となる、Extended-spectrum (ESP) β-lactamaseを研究テーマにとりあげ、以下の点を明らかにした。 1. ESP β-lactamaseは、活性にZn^<++>を要求するmetallo-β-lactamaseであり、ペニシリン類、第三世代セフェム類、カルバペネム類などを水解し不活化する。 2. ESP β-lactamaseをコードする遺伝子(bla_<ESP>)をクローニングし他菌種にいれると、bla_<ESP>遺伝子は種々のグラム陰性稈菌で発現し菌をβ-lactam剤に多剤耐性化せしめる。 3. bla_<ESP>遺伝子とその両側のDNA約4kbの塩基配列を決定したところ、bla_<ESP>遺伝子はカセットとして緑膿菌由来のインテグロン構造に挿入されており、bla_<ESP>カセットの塩基配列はSerratia marcescens由来のbla_<IMP>カセットと100%一致した。 4.臨床における緑膿菌その他の菌種における、bla_<ESP>遺伝子カセットのインテグロンへの挿入によるプラスミド間での伝播による耐性化と、かつ治療薬による耐性菌の選択が、ESP β-lactamase産生緑膿菌を蔓延せしめることが予想され、1988年から5年間にわたっての、臨床由来多剤耐性緑膿菌を調べた。 緑膿菌の血清型、染色体DNAのパルスフィールド電気泳動パターン、プラスミド型、薬剤耐性パターンなどから、臨床におけるESP β-lactamase産生緑膿菌による院内蔓延例を疫学的に証明した。
|