E. faecalisにはグラム陽性菌では唯一の高頻度接合伝達性プラスミドが存在し、これには細胞では唯一の受容菌の生産するペプタイド(アミノ酸8個)性の性フェロモンが関与する。E. faeciumはE. faecalisとともに臨床分離頻度の高い腸球菌であるが、E. faecalisと異なり高頻度接合伝達性プラスミドの存在は証明されていなかった。E. faeciumには高度薬剤耐性や、プラスミドが存在することからE. faeciumにも高頻度接合伝達性プラスミドが存在する可能性を考え、これまで存在しなかったE. faeciumの受容菌(実験株)を新たに作成しこれを用いて臨床分離株を選択的に検索した結果、Km Gm高度耐性(500μg/ml以上)高頻度接合伝達性プラスミド(80kb) (KmGmプラスミド)を分離することができた。これまでの解析で、分離されたKmGm plasmidはE. faecium【double arrow】E. faecium【double arrow】E. faecalis【double arrow】E. faecalisの間で(10^<-5>〜10^<-6>/供与菌)の伝達頻度で接合伝達されることが解った。そして、これにはそれぞれの菌の小分子物質(フェロモン)は関与していないことが解った。このことはE. faeciumのKmGm plasmidは前述した現在までに解っているプラスミドの接合伝達機構とは異なる新たな機構によることを意味する。KmGm plasmid (pKG)の制限酵素地図を作製し、EmトランスポゾンTn917を用いて接合伝達領域の遺伝学的解析を行った。DNA相補実験によりpKGはフェロモンに反応する高頻度接合伝達性プラスミドと異なる接合機構により伝達することが解った。pKGを含む菌の細菌面に対する特異的抗体を作製しpKG接合伝達に関与する蛋白を解析中である。
|