研究概要 |
今年度の研究の結果、以下の点が明らかになった。 1.病原放線菌Nocardia otitidiscaviarum IFM 0239株を用いて、リファンピシンの不活化物の単離精製を行い、その構造研究を進めた。その結果、不活化物は、燐酸が結合した場合にMassスペクトラムで特徴的に観察されるM+Na,M+2Na,M+3Naのピークが観察された。さらに燐酸の結合部位について二次元のNMR(H-H COSY,C-H COSY,HMBC)の解析の結果、21位に燐酸が結合していることが明らかになった。燐酸化は病原性放線菌ではN.otitidiscaviarumの菌種に特異的な現象であった。 2.束発育性の抗酸菌の多くがリファンピシンに耐性であることが、観察されたことから、その耐性の機構について検討した。その結果、リファンピシンの不活化が観察された。不活化物の抽出精製を進めた結果、その不活化物は高分解能のMassで分子式C_<43>H_<55>NO_<17>、分子量857を示す化合物であることが示唆された。現在その構造研究を進めているが、その構造はこれまで報告のない全く新しい不活化物であり、ここに新しい耐性機構の機構の存在が示唆された。 3.病原性放線菌のマクロライド系抗生物質の不活化機構を研究した。その結果、マクロライド系の抗生物質であるロキタマイシン、エリスロマイシンおよびミデカマイシンについては、病原性放線菌によるアグリコン部分の水酸基の燐酸化、グルコシル化、還元、さらに脱アシル化、トランスアシル化等を示唆するデータが得られた。それらの不活化物を抽出精製し、構造研究を進めた結果、マクロライドの2'-OHが燐酸化およびグルコシル化したもの、4"-0-アシル基が加水分解したもの、さらに18-formy1基が還元されたもの等、これまで観察された全ての不活化物の構造を決定することができた。
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