研究概要 |
前年度の研究において、ノカルジア以外の抗酸菌である非結核菌性抗酸菌が、これまでに明らかになっているリファンピシンとは異なる不活化活性を示したことから、今年度はリファンピシンに高度に耐性であるMycobacterium smegmatis 607株を用いて、実際にリファンピシンの不活化物を抽出し、その構造をmass,NMRスペクトラムによって検討した。 その結果、その構造が23位がリボシル化した新しい不活化物であることを証明することができた。抗生物質の不活化にはこれまで、燐酸化、グルコシル化、アデニル化等が報告されているが、リボシル化による抗生物質の不活化の報告は本研究が初めてである。M.smegmatis 以外でリボシル化酵素の存在が明らかになった非結核菌性抗酸菌は M.chelonae subsp. abscessus IFM 0359, M.flavescens ATCC 14474, M.vaccae ATCC 15483, M.parafortuitum ATCC 19686であり、その存在が確認出来なかった菌種はM.phlei ATCC 11758株のみであった。 リボシル化に関与する遺伝子をクローニングして、その遺伝子を取り込んだ大腸菌でのリボシル化酵素の活性の発現に関する研究を進めた結果、リボシル化の発現にはNADHが必須であることが明らかになった。さらに無細胞系でのリボシル化を進めた結果、リボシル化の前駆体(中間体)と考えられる2つのリファンピシンの不活化物(R‐1,R‐2)を単離することが出来た。R‐1およびR‐2は分子量1,034および1,363でいずれも燐酸を含み、またR‐1はアデニル基を含む不活化物であることが推測され、その構造は検討中であるが、これらの研究から、NADHを基質とした新しいリボシル化反応の詳細な機構を解明しつつある。
|