研究概要 |
病原性の放線菌であるノカルジアが他の微生物と異なる薬剤耐性機構を示すことを報告してきた。特に抗結核剤として重要なリファンピシンが、燐酸化やグルコシル化等のこれまで報告のない耐性機構を有することを明らかにしてきた。本研究では、病原性のノカルジアの新たな耐性機構の解明を目的に検討した結果、以下の点を明らかにすることができた。 まず始めにマクロライド系の抗生物質であるerythromycin, midecamycinおよびrokitamycinのノカルジアに対する不活化の機構を研究した。その結果、用いたノカルジアがそれぞれの種において特異的な不活化機構を示すことを見いだした。すなわちNocardia asteroidesはマクロライド系抗生物質の燐酸化、グルコシル化、還元および脱アセチル化と言う不活化活性のいずれをも示すが、N.farcinica、N.otitidiscaviarumおよびN.brasiliensisは燐酸化と還元だけを示した。またグルコシル化は極めて菌株特異的で、N.asteroidesの限られた株にしか、その活性は確認出来なかった。 リファンピシンに対する不活化機構を検討した結果、同じ抗酸菌であるミコバクテリアの多くが、これまでの不活化機構と異なる新しい耐性機構を示すことを見いだした。これら不活化物についてmass, NMR等を駆使してその構造を解析した結果、リファンピシンの23位の水酸基がリボシル化している新しい不活化物であった。抗生物質の不活化による耐性機構としては、これまでに燐酸化、アデニル化、グルコシル化等がよく知られているが、リボシル化はこれまでに報告のない全く新しい耐性機構であった。この耐性に関与している遺伝子の研究も進めているが(その一部は南アフリカの研究者とその共同研究で進められている)これまでの研究でリボシル化機構としてNADの基質として関与していることを示す新しい結果が得られつつあり、現在詳細な研究が進められている。NADが酵素反応の直接の基質として、関与している例は珍しく、現在中間体の構造、遺伝子レベルでの研究を進めている。
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