研究概要 |
抗結核防御免疫の主体となるCD4^+感染抵抗性T細胞はBCG生菌免疫によってのみ出現し、抗原刺激後のIFNγ産生能により特徴付けられる。平成6年度は、この感染抵抗性T細胞の認識抗原を特定し、精製することを目的として実験を行い、以下のような知見が得られた。 1.BCG菌体より得られたIFNγ産生惹起抗原の分子量は約18kDaで、菌体中の細胞質膜画分に多く存在することが示された(Infect.Immun.62:4396-4403,1994)。2.2次元電気泳動の結果、この抗原の等電点は約4.5であった。3.既知の結核菌抗原で、本研究で精製した抗原と分子量が比較的近い、TB23(19kDa)およびTB68(16kDa)に対するモノクローナル抗体が、本研究で精製した抗原に反応するか否かを調べた。その結果、BCGlysate中にはこれら結核菌抗原に対する抗体と反応する抗原が存在するが、IFNγ産生を惹起する抗原とは反応しないことが示された。4.BCGlysateより得られた抗原でBCG生菌および死菌免疫マウスの脾細胞を刺激し、各種サイトカインmRNAの発現をRT-PCRで調べた。その結果、生菌免疫マウスではTh1型の反応が認められた。一方、防御免疫を発現しない死菌免疫マウスではTh2型の反応も認められ、死菌免疫では結果的に防御を担うTh1型T型細胞の機能や分化が抑制されていることが示唆された。5.正常マウス脾細胞をin vitroでBCG生菌刺激した場合に、NK細胞由来のIFNγ産生が認められた。IFNγはTh1型T細胞の分化を促進することが知られており、また死菌刺激ではIFNγ産生は認められなかったことから、NK細胞がIFNγ産生を介して感染抵抗性T細胞の分化に関与している可能性が示された。
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