結核菌由来の新しい感染防御抗原の特定と宿主感染防御への応用

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06670285
• 研究機関: 新潟大学
• 研究代表者: 河村 伊久雄 新潟大学, 医学部, 助手 (20214695)
• 研究分担者: 光山 正雄 新潟大学, 医学部, 教授 (10117260)
• キーワード: 結核菌 / 感染防御 / 感染防御抗原 / 感染防御免疫 / ツベルクリン / ワクチン

研究概要

マウスを用いたM.bovis BCGの実験感染モデルで、抗結核防御免疫の発現に重要なIFN_γ産生性CD4陽性T細胞の認識抗原を特定し、この抗原の抗結核防御免疫における重要性について解析した。
1.マウスをBCG生菌で免疫するとIFN_γ産生能を有するT細胞が誘導され、防御免疫が出現する。しかしBCG死菌で免疫するとDTHを担うT細胞の出現は認められるが、IFN_γ産生性細胞は出現せず防御免疫も発現しない。そこで、BCG菌体より精製した各種抗原でBCG生菌免疫マウスの脾細胞を刺激しIFN_γ産生を調べた結果、分子量約18kDaの抗原で刺激した場合に最も強いIFN_γ産生が認められた。この抗原はPPDやBCG生菌のみならず防御免疫を誘導しない死菌にも存在した。この結果から、感染防御免疫を誘導するためには抗原以外の別な因子の関与が示唆された。
2.強いIFN_γ産生は生菌免疫マウスの脾細胞を刺激した場合にのみ認められたが、IL-2産生は生菌免疫でも死菌免疫でも分子量の異なる幅広い抗原刺激に対して同様に認められ、T細胞の増殖応答やIL-2産生は防御免疫の指標にはんならないと考えられた。
3.正常脾細胞をBCG生菌および死菌で刺激すると、TNFαの発現は両刺激で同程度に認められたが、マイクロファージの殺菌に重要なNO産生は生菌刺激の場合に強く誘導され死菌刺激では認められなかった。またBCG生菌はNK細胞からのIFN_γ産生を強く誘導したが、死菌にはその能力は認められなかった。IFN_γはNO産生のためのiNOS発現誘導に不可欠であることが明かとなり、NK細胞からのIFN_γ産生誘導能の違いが両者のNO産生能を反映していると考えられた。IFN_γタイプのT細胞の分化因子であり、BCG生菌でのみその産生が認められたことから、死菌が免疫早期にIFN_γあるいはその他の分化因子の産生を誘導出来ないことが、死菌ワクチンが有効に作用しない原因であろうと考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Xiong,Huabao: "Cytokine gene expression in mice at an early stage of infection with various strains of Listeria spp. differing in virulence." Infection and Immunity. 62. 3646-3654 (1994)
• [文献書誌] Kawamura,Ikuo: "Antigen provoking g-IFN production in response to Mycobacterium bovis BCG and functional difference in T cell response to this antigen between viable and killed BCG-immunized mice." Infection and Immunity. 62. 4396-4403 (1994)
• [文献書誌] Oshikiri,Kuninaka: "Specific immune response to the 40 kDa outer membrane protein of Porphyromonas gingivalis in mice." Archives of Oral Biology. 39. 700-713 (1994)
• [文献書誌] Yasumoto,Shin-ichiro: "Ultraviolet-B irradiation alters cytokine production by immune Lymphocytes in herpes simplex virus-infected mice." Journal of Dermatological Science. 8. 218-223 (1994)
• [文献書誌] Nishibori,Takeaki: "Correlation between the presence of virulence-associated genes as determined. by PCR and actual virulence to mice in various strains of Listeria spp." Microbiology and Immunology. 39. 343-349 (1995)
• [文献書誌] Yang,Jianfei: "Involvment of natural killer cells in nitric oxide production by spleen cells stimulated with Mycobacterium bovis BCG" Journal of Immunology. 155. 5728-5735 (1995)
• [文献書誌] 光山正雄: "細菌感染の分子医学-その新展開(渡辺治雄編)" 羊土社, 178 (1995)