研究概要 |
Clostridium difficileの毒素産生へのビオチンの増強効果(ビオチン効果)をKZ1647株を用い、9種類のアミノ酸、3種類のビタミンを含む合成培地(6xMADM)にて検討した。先ず、ビオチン濃度と菌の増殖および毒素産生の関係について解析した。菌の増殖はビオチン濃度が5nMの時最高値を示し、ビオチン濃度の低下と共に減少した。しかしながら、毒素産生はビオチン濃度を0.05nMに減少した時、著しく増加した(トキシンA,35倍;トキシンB,64倍)。ビオチン濃度を0.005nMに減少すると毒素産生は顕著に減少したが、0.00005nMにおいても毒素産生は50nMの場合より高かった。次に培養時間と毒素産生の関係を検討した。ビオチン濃度0.05nMにおける毒素産生パターンはビオチン濃度50nMの場合と相違は認められず、培養液中の毒素は培養48時間以後に出現し96時間後に最高値に達した。KZ1647株以外の18菌株について、ビオチン濃度0.05nM-6xMADMにおける毒素産生とビオチン50nM-6xMADMおよびm-BHI(毒素産生に優れた複合培地)における毒素産生を比較検討することによりビオチン効果の普遍性を検討した。VPI10463株を除いた18株全株(KZ1647株を含む)にビオチン効果が認められた。即ち、ビオチン0.05nM-6xMADMにおけるこれら18株のトキシンA産生量はビオチン50nM-6xMADMの2-63倍(平均20倍)であった。さらに、ビオチン0.05nM-6xMADMにおけるトキシンA産生はm-BHIより良好であり、19株中10株においてはビオチン0.05nM-6xMADMにおけるオキシンA量はm-BHIの2-18倍(平均8倍)であった。トキシンB産生量は全例においてトキシンAに平行していた。本研究によりC.difficileの発育に必須なビタミンであるビオチンの不足は毒素産生を増強し、かつこの現象は本菌に普遍的であることが明らかとなった。
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