研究概要 |
レンサ球菌の中で分類に混乱がおきているビリダンス-グループーレンサ球菌の基準種のリボゾームRNAの配列を決定し,全レンサ球菌の系統樹を作成した(文献1)。 その結果これまでビリダンス-グループーレンサ球菌と一括されてきた菌群が5つの系統に分かれることが明らかになった。そのうちStreptococcus mitisとStreptococcus oralisが系統的に近く,16SリボゾームRNAの配列でも99.4%の相同性があることがわかった。両者は定量的DNA・DNAハイブリッド形成実験でも44-55%の類似度があり、近接した種であることが証明された。臨床的にも両者の鑑別は正確には行われておらず両者の鑑別に有効な表現形質を記載する事が今後の課題となった。 一方、Streptococcus sanguisはリボゾームRNAの配列では他のビリダンス-グループーレンサ球菌の他の菌種とは類似度が低くリボゾームRNAの配列から鑑別することは容易であった。しかし臨床分離株の中には基準株との相同性が低い株が多数存在することから基準株の遺伝子配列を使いこの種の正確な同定方法を作成し、これらの未分類の菌株を記載する必要がある。今回の研究のなかですべてのビリダンス-グループーレンサ球菌のリボゾームRNAの配列が出そろったため、菌種に特異的な配列の記載が可能になったので、この成果は今後の研究の貴重な情報になる。 本研究を通して決定したS.delectivaおよびS.adjacensの2菌種は連鎖球菌とは系統的に異なり、まったく新しい属として分類する必要があることが証明された(投稿中)。
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