毒素原性大腸菌が産生する耐熱性下痢毒素(ST)は腸管膜グアニル酸シクラーゼを活性化しサイクリックGMP濃度を上昇させて下痢を起こす。本研究では下痢のメディエーターであるサイクリックGMPの生成に関与する膜結合型グアニル酸シクラーゼにいかして活性化のシグナルが伝わるかを分子生物学的手法で解明することを目的とした。 すでにST受容体であるグアニル酸シクラーゼのc末端側にある63残基のアミノ酸を遺伝子操作して欠如させた受容体ではSTがこの受容体に結合しても活性化のシグナルは伝達されない。そこで5種類の変異受容体を作製して毒素結合に対応してグアニル酸シクラーゼ活性が活性化されるかいないかを検討した。その結果プロテインキナーゼCでリン酸化を受けることが推定された配列を変異させたものでは影響の無いこと、39残基のアミノ酸をc末端から削った受容体では毒素による活性化が起きないこと、さらに22残基のアミノ酸を削ったものでは著明な活性化が認められたことなどからc末端の23残基から40残基にいたるアミノ酸部位に何らかの機能が存在する可能性が考えられている。
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