研究概要 |
著者らは,ウサギ顆粒球からLPSと結合しこの活性を中和する18kDaの塩基性抗菌性蛋白を発見しCAP (Cationac antibacterial protein)と呼んできた(Infect. Immun, 62; 1421-426, 1994))。この蛋白は142のアミノ酸残基からなる分子量16.6kDaの塩基性蛋白であり,さらに,C-末端37個のアミノ酸残基からなるペプチドがLPSの結合やその中和,さらに抗菌活性に関与するドメインであった。このペプチドはin vitroでのLPS刺激によるマクロファージからの組織因子,一酸化窒素およびIL-1,IL-6やTNFの産生などを抑制し,さらに,ヒトの顆粒球からCAP18ファミリーに属する蛋白のcDNAを得た。ヒトの蛋白は140個のアミノ酸残基からなっており,N末端103残基はウサギのものと70%の相同性を示し,C末端37残基では38%であった(Infect. Immun, 63; 1291-1297, 1995)。ヒトのCAP18においてもC末端37残基がLPS結合ドメインであった。ヒトでも32残基のペプチドの活性が高く,グラム陰性および陽性菌に対して抗菌活性を示した。ヒトのペプチドの一部の配列をウサギのものと置換したキメラペプチドでは,LPS結合能および抗菌活性がさらに高くなった。ポリミキシンB (PxB)はLPS結合能とその中和および抗菌活性をもつ塩基性の環状ペプチドであり,CAPペプチドと同様の活性をもつことから両者を比較検討した。PxBは,PxB感受性のKlebsiella pneumoniae由来のLPSとは結合するがPxB耐性菌由来のLPSとは結合しない。一方,ペプチドはいずれのLPSとも結合し,PxB耐性菌に対しても抗菌活性を示した。従って,CAP18ペプチドとポリミキシンではLPSと結合する様式が異なることが示唆された。
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