平成6年度は主にLPS受容体の特性に関する解析を行った。 1.CD14陰性非マクロファージ細胞株のLPS反応性に関する解析。 マウス骨髄ストローマ細胞株であるST2細胞は、CD14mRNAの発現はなかった。この細胞のLPS反応性を詳細に検討した。その結果、ST2細胞は低濃度のLPSにも反応してIL-6を産生する。LPSの多糖鎖部分や血清成分はST2細胞のLPS反応性にあまり影響がしない。LPSアゴニストであるタキソ-ルはST2細胞のIL-6mRNA発現を誘導し、この反応はLPSアンタゴニストであるRhodobacter spheroidesリピドAによって抑制された。 2.CD14遺伝子を導入したST2細胞株のLPS反応性およびLPS結合性に関する解析。 マクロファージ上でのCD14分子の機能がCD14分子単独によるものか、それともCD14とLPS受容体との会合が必要なのかを解析する目的で、CD14遺伝子を発現ベクターに組み込みLPS反応性CD14陰性細胞株のST2細胞や、LPS受容体を発現していないと期待されるCOS細胞にCD14遺伝子を導入した。 3.CD14非依存性のLPS結合実験の確率およびLPS結合特性に関する解析。 CD14に依存しないLPSとLPS受容体との結合を観察することを目的として、ST2細胞に対する、標識LPSの結合実験を行った。この結果、ST2細胞ではCD14に依存しないLPS結合部位が存在することが明らかとなった。 平成6年度は当初の研究計画に沿って、主にLPS受容体の特性に関する生物学的解析を行い、予想以上の成果を得ることができた。特に、CD14分子に依存しないでLPSに高感度で反応する非常にすぐれた細胞実験系の確立ができたことは、この研究の大きな進展であったと思う。この系を用いて、CD14に依存しないLPSとLPS受容体との直接の相互作用を解析し、その結果、これまでにマクロファージでその存在が想定されていたがCD14分子のためにその実体だ遮蔽されていたLPS受容体の特性の多くを明らかにすることができた。さらに、このLPS受容体とCD14の関係、LPS受容体のLPS結合特性の詳細など引き続いて検討して行く予定である。
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