本研究の目的は、無毒性でアンタゴニスト活性を示すリピドA類縁構造を解明してその化学合成を行い、さらにはその応用への発展を図ることである。平成6年度は、天然に存在する数種類の低毒性エンドトキシンリピドAの構造解析、活性型リピドAの化学修飾による無毒化等の研究を行うなかで、天然のリピドAをサクシニル化することできわめて効率的に強力なエンドトキシンアンタゴニストを誘導することができることを見いだした。その解析のため、化学合成したリピドA類縁体を用いてそれらの遊離水酸基にサクシニル基を導入したところ、E.coliやSalmonella等の完全構造リピドAは、この修飾によってエンドトキシン活性には全く影響を受けなかったが、前駆体構造を同修飾すると完全に活性がなくなり、強力なアンタゴニストに変換することを見いだした。この結果は還元末端の遊離水酸基は活性に全く影響を与えないが、非還元末端側の脂肪酸の遊離水酸基の置換基はエンドトキシン活性、アンタゴニスト構造の誘導に決定的な役割を果たすことが示唆された。このことを直接証明すると共に、この前駆体構造の遊離水酸基のうち、どれが活性構造、アンタゴニスト構造を決定しているのかを確定するために、特定の水酸基のみにサクシニル基を導入した化合物群の合成を行った。その結果、3'位脂肪酸の3位水酸基のみをサクシニル基で修飾した前駆体が完全にエンドトキシン活性を喪失していること、また人由来のTHP-1細胞からのTNF産生に対して強力なアンタゴニストとして作用することが明らかとなり、この部位の水酸基の置換基が活性発現、アンタゴニスト構造誘導に重要な働きをしていることが証明された。
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