研究課題/領域番号 |
06670318
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
北目 文郎 山形大学, 医学部, 教授 (40004676)
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研究分担者 |
村木 靖 山形大学, 医学部, 助手 (00241688)
本郷 誠治 山形大学, 医学部, 講師 (90229245)
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キーワード | C型インフルエンザウイルス / 糖蛋白質 / レセプター |
研究概要 |
C型インフルエンザウイルスのHE糖蛋白質上にレセプター認識部位を位置付けることを目的として、我々はこれまでに、抗HE単クローン抗体との反応性を欠く変異ウイルス(escape mutannts)の中から、レセプターとの親和性に異常を示す多数の株を選び、それらのHE遺伝子の塩基配列を親株と比較することにより、少なくとも10箇所(178、186、187、190、206、212、226、245、266および283)のアミノ酸がレセプター認識に関与していることを明らかにしてきた。しかしながら、escape mutannts上に検出される変異はいずれも中和に関与する抗原決定基に限定されるので、レセプター認識に与えるアミノ酸の全てが上記10箇所中に網羅されているとは言い難い。 そこで今年度は、A型やB型インフルエンザウイルスにおいては、新しい宿主への馴化の全てがレセプターとの高親和性を獲得した突然変異体の選択に基づくという事実に鑑み、C型インフルエンザウイルスのHMV-II細胞への馴化を試み、多数のレセプター高親和性を示す変異ウイルスを取得し、馴化前後のウイルス間でHE遺伝子の塩基配列を比較し、以下の成績を得た。 1.HEの抗原性がC/山形/1/81に類似しているウイルス(山形/81系統)では、馴化後のウイルスはレセプター高親和性のみならず抗原性の変化をも獲得しており、212位(Glu→Lys)或いは283位(Asp→Asn)のアミノ酸が変化していた。 2.ミシシッピ-/80及び愛知/81系統に属するウイルスでは、馴化ウイルスの大半(18株中12株)がレセプター高親和性と同時に抗原性の変化も伴っており、抗原性の変化を伴わないレセプター高親和性ウイルスは僅か6株であった。 3.上記6株の変異部位は抗原決定領域に近接した202位(Glu→Gly)かレセプター認識や抗原性とは無関係と思われるHE2領域の533位(Ala→Val)であった。 以上の成績は、(1)C型インフルエンザウイルスの場合、レセプター認識に関与するアミノ酸のほぼ全てが抗原性にも関わっていること、従って、(2)escape mutanntsの解析から得ていた10箇所のアミノ酸部位がレセプター認識に関わるアミノ酸のほぼ全てを網羅していると考えてよいことを示唆している。 また、鶏赤血球をよく凝集するのに、マウスやラットの赤血球と殆ど反応しないという特異な凝集能を持つC/山形/10/89の82番目のアミノ酸が、これまでの分離株では検出されたことがないLysであった。212位と283位に加え、この部位のレセプター認識における意義も今後明らかにしたい。
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