ポリオウイルスの組織特異性を担う重要なシスエレメントと考えられるウイルスRNAの5'非翻訳領域内のIRESの構造と機能、および種特異性を担う宿主分子と考えられるポリオウイルス受容体(PVR)の中枢神経細胞における特異的発現機構を個体内で解析するためにアデノウイルス5型由来のウイルスベクター系を導入する目的で研究を行った。PVRを持つトランスジェニック(Tg)マウスは、ポリオウイルスの感染動物モデルとして、サルに代わり得ることが示されているので、使用する個体はTgマウスの由来となったICR又はIQIマウスとした。 IRESにより第2シストロンのレポーター(β-gal)が発現するように設計したジシストロニックmRNA(第1シストロンはCATmRNA)がアデノベクターにより転写されるように組換えアデノウイルスを構築した。IRESとして、ポリオウイルスの強毒Mahoney株IRESと弱毒Sabin 1IRESを用いた。この組換え体アデノウイルスをHeLa細胞に感染させ、CATとβ-galの活性の比を計算したところ、時間およびmoiの広い範囲にわたって、IRESが同一であれば一定であることが判明した。このことは、このウイルスベクター系を個体に応用できることを示している。現在、マウス中枢神経系に対する接種を行っている。 PVR遺伝子の上流約3000塩基を含む領域および上流から種々の長さの欠損を持つDNAをレポーター遺伝子(CAT)に結合させ、ElAプロモーターを持たないアデノウイルスベクターに組み込んだ。この組換え体アデノウイルスをHeLa細胞に感染させ、レポーター遺伝子の発現を観察した。その結果、プロモーター活性は上流約100塩基以内に存在することが明らかとなった。現在、マウス中枢神経系への接種を行っている。エンハンサーなどを同定するため、PVR遺伝子を持つYACクローンも解析している。
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