ワクチニアウイルスの細胞への侵入活性を担うVP23-29Kタンパクに対し存在が予測される、宿主細胞膜上のリセプターの同定を目指して一連の研究を行い、今年度以下の結果を得た。 (1)ウイルス粒子から界面活性剤SDSを用いて抽出したタンパク質サンプルを細胞培養に添加すると、DNAの断片化を指標としてみたアポトーシス誘導作用を示すことが明らかになった。同サンプルより特異抗体を結合したアフィニティーカラム用いて分離したVP23-29Kにも同様の活性が認められ、VP23-29Kと細胞膜レセプターとの結合がアポトーシス誘導の引き金になることが示唆された。 (2)VP23-29Kのアミノ酸配列をアポトーシス誘導作用を有する既知の生理活性物質と比較したところ、tumor necrosis factor(TNF)-αの活性部位と極めて類似する(11アミノ酸中7)箇所が存在することが見出された。TNF-αの活性に必須とされる3箇所のアミノ酸はいずれもVP23-29Kの配列中に保存されており、アポトーシス誘導の機構としてTNF-αとVP23-29Kとの機能的相同性が考えられる。 (3)TNF-α存在下にウイルスを培養細胞に感染させると、濃度依存的に感染効率の低下が認められ、VP23-29KとTNF-αが同一のリセプターに競合的に結合する可能性が示唆された。 (4)昨年度の研究で、可溶化した細胞膜タンパクをVP23-29Kとのアフィニティーにより分画すると4種のタンパクが回収されることを見ている。これらのいずれか、特に分子量の類似から分子量55、000のタンパクがTNFリセプターと同一の分子である可能性を考えているが、他施設から供与された抗TNFリセプター抗体にはVP23-29Kによるアポトーシス誘導の阻止作用はなく、また上記4種のタンパクとの反応も認められなかった為、現在この点について更に解析を行っている。
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