研究概要 |
インフルエンザウイルスは8本に分節したRNAをゲノムとして持つ。ゲノムRNAが分節構造をしているウイルスでは、それぞれのRNA分節が複製およびウイルス粒子へのパッケージング過程において、正常なウイルス産生をするためにどのように調節されているのかが全く分かっていない。我々は、一回の増殖サイクルの中でPAポリメラーゼ遺伝子を欠損した干渉性欠損(DI)粒子を多量に産生するNS2蛋白の変異株を分離し、その解析から、DI-RNAはそれが派生した親遺伝子RNAの複製をcRNA合成過程で特異的に抑制することを解明した(Odagiri T.et al.,J.Gen.Virol.,75,43-53,1994)。さらに、我々は本年度における研究においてDI粒子形成過程でDI-RNAがその親遺伝子RNAと特異的に競合し、その結果、DI-RNAは選択的にウイルス粒子内へパッケージングされることを解明した(J.Virol.,投稿中)。 我々は以上の解析結果をもとに、DI-RNA分子上には、複製抑制およびパッケージング抑制を受ける標的遺伝子の選択制を規定しているシグナルが存在することを見出した。すなわち、インフルエンザウイルスには、各RNA分節を区別する分子識別機構があることを初めて捉えることに成功した。現在我々は、このRNA分子識別シグナルを同定するために、組換えゲノムRNAを作成し、リバースジェネテイクスの手法を用いて解析を進めている。
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