活性酸素によるインターロイキン8産生誘導機構の分子生物学的解析

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06670346
• 研究機関: 金沢大学
• 研究代表者: 向田 直史 金沢大学, がん研究所, 助教授 (30182067)
• キーワード: インターロイキン8 / NF-kB / IkBα / リン酸化 / チロシン・キナーゼ / リポ多糖類 / セリン / スレオニン・キナーゼ

研究概要

1)THP.1細胞をリポ多糖類にて刺激するとIL-8遺伝子活性化が起きるが、この遺伝子発現にはNF-kBの活性化が必須であった。この系において、種々の抗酸化剤は、IL-8遺伝子発現を抑制しなかった。これは用いた抗酸化剤の細胞への透過性などに問題がある可能性があると考え、この点を克服するために、リポ多糖類依存性にNF-kBの活性化を無細胞系で検討する系を確立した。この系において、NF-kBの活性化に先立ち、その細胞内阻害因子であるIkBのリン酸化が起きる一方でIkBの分解はNF-kBの活性化には必須ではないことを明らかにした。また、NF-kBの活性化にはスタウロスポリン感受性リン酸化酵素とチロシン・リン酸化酵素が関与するのに対して、IkBのリン酸化にはチロシン・リン酸化酵素が関与していることも明らかにした。
2)粗精製したIkBリン酸化酵素は、リポ多糖類依存性にIkBのC末端側に存在する、酸性アミノ酸に富む部分に存在するセリン・スレオニン残基、なかでもSer293をリン酸化した。さらに、このリン酸化酵素はカゼイン・キナーゼやMAPKのペプチド性の阻害剤にては阻害されないことから、これらのリン酸化酵素とは基質特異性が異なることも明らかにした。リン酸化部位に相当するペプチドによって、無細胞系で認められるIkBのリン酸化・NF-kBの活性化がともに阻害されることから、この部位のリン酸化がこれらの現象に必須であることも明らかにした。
以上の結果は、このIkBリン酸酵素の性状を明らかにすることによって、この酵素を標的とした新たなNF-kB活性化の抑制法、急性炎症反応で大きな役割を果たしているIL-8産生の抑制法、ひいては急性炎症反応の制御法の開発にもつながる可能性を強く示唆している。

研究成果

• [文献書誌] Okamoto,S-i.: "The interleukin-8 AP-1 and kB-like sites are genetic end targets of FK506-sensitive pathway accompanied with calcium mobilization." J. Biol. Chem.269. 8582-8589 (1994)
• [文献書誌] Mukaida,N.: "Novel mechanism of qlucocortiocid-mediated gene repression:nuclear factor kB is target for glucocortiocid-mediated interleukin 8 gene repression." J. Biol. Chem.269. 13289-13295 (1995)
• [文献書誌] Oliveira,I.C.: "Transcriptional inhibition of the interleukin-8 gene by interferon is mediated by the NF-kB site." Mol. Cell. Biol.14. 5300-5308 (1995)
• [文献書誌] Ishikawa,Y.: "Establishment of lipopolysaccharide-dependent nuclear factor-kB activation in a cell-free system." J. Biol. Chem.270. 4158-4164 (1995)
• [文献書誌] Kuno,K.: "Identification of an IkBa-associated protein kinese in a human monocyte cell line and determination of its phosphorylation sites of IkBa." J. Biol. Chem.270. 27914-27919 (1994)
• [文献書誌] Mukaida,N.: "Molecular msechanism of interleukin8(IL-8)gene expression." J. Leukocyte Biol.56. 554-558 (1994)
• [文献書誌] Matsushima,K.: "Proceeding of IIIrd International Mochida Memorial Symposium" The Mochida Memorial Foundation for Medical and Pharmaceutical Research, 11 (1994)
• [文献書誌] Okamoto,S.: "In the Chemokines Proceeding of IIIrd International Symposium of Chemotactic Cytokines" Plenum, 6 (1994)