ランゲルハンス細胞はT細胞活性化能が低いことから比較的未成熟な細胞と考えられる。そのひとつの要因として、細胞接着分子ならびにco-stimulatory moleculeの発現量が少ないことがあげられる。培養により機能的に成熟することが知られているので、MHCクラスII分子の発現を指標に表皮細胞中のランゲルハンス細胞を同定し、調製直後から3日に及ぶ培養期間中の種々の細胞表面分子の発現をFACSにて解析した。MHCクラスII分子やHSA分子の発現は初期の24時間以内に最高に達し、その後に大きな変動は認められなかった。しかし、CD54(ICAM-1)やB7-2(CD86)、Pgp-1(CD44)の発現は、はじめに大きく増加した後も、徐々に増加し続けることが示された。一方、B7-1(CD80)やCD40の発現は調製直後には殆ど検出されなかったが、1日後には弱いながら有意の発現が認められた。一方、CD2のマウスリガンドであるCD48は新鮮な細胞にも発現されており、培養による変動は認められなかった。CD80とCD86の両者に結合するCTLA-4Igの発現を調べたところ、発現の増加パターンはCD86に似ており、CTLA-4Igの結合に対するCD86による競合阻害実験の結果、CD86がCTLA-4Igの主要な結合分子であることが明らかになった。さらに、抗CD86の添加により35-60%のT細胞増殖応答が阻害され、抗CD80を共存させると阻害程度は強まり、CTLA-4Igの場合と同程度になった。脾樹状細胞を用いた場合にも、培養によるこれらの分子の発現における変動はランゲルハンス細胞の場合と同様であるとの結果が得られた。また、骨髄細胞よりGM-CSFの存在下で増殖分化が誘導された樹状細胞においても、in vitroでの機能の成熟に伴う種々の細胞接着・共刺激分子の発現増加が示された。以上の結果より、樹状細胞の成熟に伴うT細胞活性化能の上昇には細胞接着・共刺激分子の発現増加が重要な意味を持つことが明らかである。
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