血中のC型レクチンであるMBP(mannose結合蛋白)やコングルチニンはコラーゲン様構造をもちコレクチンと総称され、生体防御に重要な働きをしている。我々はmannanカラムに結合しGlcNAcで溶出される新たなレクチンP35を見い出した。還元下でのP35の分子量は35kDで、血清中では重合しオリゴマーとして存在していると考えられた。P35は、特異的にGlcNAcを認識し、MBPと同様にある種の細菌に対しオプソニンとして作用することが明らかになった。cDNAから推定されるP35は313個のアミノ酸からなり、シグナルペプチド、コラーゲン様およびフィブリノーゲン様ドメインからなっていた。フィブリノーゲン様ドメインにはCaイオン結合配列が存在し、P35の糖鎖結合活性に関与していると推定された。P35の一次構造は、ブタ子宮細胞膜からTGF-β1結合タンパクとして単離されたFicolinに約75%の類似性を示した。P35は主に肝臓で発現されており、主な転写産物の長さは1.3kbであった。P35の遺伝子構造を解析した結果、P35は少なくとも8個のエクソンでコードされており、その領域は約10Kbであった。2つのエクソンでコードされたコラーゲン様ドメインは、イントロンの挿入位置から非繊維性コラーゲン遺伝子を祖先とすることが推定された。また、フィブリノーゲン様ドメインは4つのエクソンでコードされており、このうちの2つのイントロンの挿入位置がテネイシン(フィブリノーゲン様構造をもつ細胞外マトリックスタンパク質)と共通することがわかった。すなわち、2つのドメイン構造をコードする遺伝子はそれぞれ起源を異にし途中で結合したものと推定された。また、我々はP35遺伝子単離の際に、配列が少し異なるP35関連遺伝子を単離した。この遺伝子は、別のグループにより単離されたヒトFicolinをコードすることがわかった。P35関連遺伝子は主に肺と末梢白血球に発現しており、その大きさは1.4Kbであった。さらに、P35遺伝子およびP35関連遺伝子はともに9番染色体長腕に存在した。以上の結果から、P35とその関連因子は1つのファミリィを形成すると考えられ、その中の1つのP35は肝臓で合成され血中に存在し、オプソニンとして感染の初期防御に関与することがわかった。
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