研究概要 |
平成7年度にてVpre-B3T(8HS-20欠損)マウスに関し C57BL/6マウスへの5代までの戻し交配、得られたマウスに関し(1)T細胞依存性抗原NP-CGに対する免疫応答の解析、(2)骨髄B細胞におけるμ鎖複合体発現の解析、また、ドイツ・ケルン大K. Rajewsky博士との共同研究によってλ5Tマウスとの交配にてVpre-B3T/λ5T 2重変異マウスを作製し(3)λ5Tマウスにて観察されるIeaky B細胞産生に対するVpre-B3欠損による影響、(4)Vpre-B3Tマウスにおける免疫グロブリン遺伝子RF2の読みわくによるDμ蛋白陽性細胞排除の検討を行い以下の知見を得た。 (1)昨年度にて観察されたNP-CGに対する1次応答、及び2次応答でのVpreB3TマウスにおけるIgG2a抗体価の上昇では7倍見られた差が5代戻し交配することにより3倍程度に減少した。またNP-CGに対するIgM,IgG1,IgG2b,Igλ_1抗体価も前年同様遺伝子型間で差が認められなかった。よってVpre-B3欠損によりT依存性抗原に対する免疫応答への影響は少ない可能性が示唆された。 (2)都立臨床研・烏山博士より供与されたμ鎖複合体を認識するVpre-B鎖、λ5鎖に対するモノクローナル抗体を用いて、Vpre-B3Tマウス由来骨髄B系細胞のμ鎖複合体の発現を検討した所、野生型と差は認められずVpre-B3遺伝子単独欠損ではμ鎖複合体発現様式に影響を与えないことが示唆された。 λ5Tマウスにて認められるleaky B細胞の産生はλ5T/Vpre-B3T 2重変異マウスにても観察され、leaky B細胞産生にVpre-B3蛋白が必須である可能性は低いと考えられた。 (4)RFの読みわくにより産生されるDμ陽性細胞の排除もVpreB-3Tマウスにて正常に認められた。このことによりVpre-B3蛋白のDμ陽性細胞排除への直接の貢献の可能性は低いと考えられた。 以上のことからVpre-B3鎖がμ鎖複合体発現に対しそれ単独で機能している可能性は低いと考えられた。しかしλ5T/Vpre-B3T 2重変異体にて現在一部B系細胞の異常も否定しきれず今後更なる検討を予定している。
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