研究概要 |
骨髄中で誘導されるB細胞分化の過程で発現されるμ鎖複合体を構成すると考えられる第3の代替L鎖をコードする幼若B細胞特異的8HS-20(Vpre-B3)の機能を明確にし、μ鎖複合体のB細胞分化における生物学的機能、μ鎖複合体発現様式の分子生物学的機序を明らかにする目的でVpre-B3遺伝子欠損(Vpre-B3T)マウスを作製し、ホモVpre-B3T個体に対し以下の性状解析を行った。 (1)B細胞の性状解析 (2)in vitroでのstroma細胞を用いたVpre-B3Tマウス由来B系細胞の分化能 (3)in vitroでのLPS及び抗IgM刺激に対する応答 (4)T依存性抗原、及びT非依存抗原に対する免疫応答 (5)λ5Tマウスとの2重変異マウスの作製及びその性状解析(ケルン大遺伝研・K. Rajewsky博士との共同研究) (6)免疫グロブリン遺伝子RF2の読みわくによ由来するDμ蛋白生産細胞排除の有無(同上) その結果 (1)一部の個体でHSA,CD23の発現異常及びCD5陽性B細胞亜群の数の変動 (2)NP-CGに対するIgG2a抗体化の若干の亢進(3倍程度) (3)λ5T/Vpre-B3T 2重変異マウスにおけるB細胞分化異常の可能性等微細なphenotypeは観察されたものの野生型と生物学的な差異は殆ど認められなかった。これらのことからVpre-B3蛋白が単独かつ特異的にμ鎖複合体発現に生物学的機能を及ぼす可能性は非常に低いと考えられた。しかし最近Vpre-B3,λ5,Vpre-B1鎖の他にμ鎖複合体を構成する分子が複数報告されていることからVpre-B3蛋白分子がこれらの分子群と共同或いは相互作用し生物学的機能を発現するとも考えられ種々の変異マウスとの掛け合わせ及びVpre-B3Tマウス由来幼若B細胞株を用いたμ鎖複合体合成及び細胞内構造の生化学的解析等、更に詳細な解析の必要が提起された。
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