研究概要 |
金属で暴露された労働者の暴露量の推定に、生物学的モニタリングとして、血液,尿,毛髪が主に使用される。血液,尿は代謝速度が早く、過去の暴露量の推定には必ずしも適した試料とは言えない。その点、毛髪試料は暴露量の情報を蓄積しているが、従来の金属の測定方法では、微細な部位の金属測定は困難である。この様な理由から非破壊放射光蛍光X線を用いて、金属精錬労働者の毛髪試料を測定して金属分布を明らかにした。その知見は下記の如くである。 1.鉛精錬工場労働者の毛髪断面の鉛分布は毛髪表面に多く存在しており、外部汚染由来のものであることが推定された。 2.亜鉛精錬工場労働者の毛髪試料の亜鉛分布は、表面から内部へ25〜35ミクロンの深さまで同程度の濃度で分布しており、内因性の金属であるために外部暴露による周辺部の蓄積との差が明瞭に示されなかった。 3.銅精錬工場労働者の毛髪中の銅分布は表面に多く存在しており、外部汚染に由来したものの方が相対的に高濃度であった。 4.鉛,水銀,カドミウム等の水溶液にも毛髪試料を浸した場合、いずれも毛髪の表面(皮質)に多く存在し、これら金属の毛髪への親和性が高いことが示された。 以上のことから、本測定方法は、生物学的モニタリングとして毛髪試料の測定に非常に有効な手段として利用されることが明らかになった。
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