研究課題/領域番号 |
06670373
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
栗原 伸公 東京大学, 医学部(医), 助手 (10234569)
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研究分担者 |
和田 攻 東京大学, 医学部(医), 教授 (60009933)
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キーワード | 腎不全 / 急性虚血性腎症 / カロリー制限 / 絶食 / 予防 / エンドセリン / トロンボキサン / 腎糸球体 |
研究概要 |
腎不全に対する予防方法については、従来より蛋白制限によるものが有名であるが、ごく最近、カロリー制限による予防についても、その効果が報告され始めている。我々は、急性虚血性腎症ラットモデル(両側腎動脈30分間結紮モデル)においては、血管収縮性ペプチドホルモンであるエンドセリン-1(ET-1)、トロンボキサンA2(TxA2)の腎糸球体における産生能が亢進し、腎機能悪化の一因となっている可能性があることを、新たに発見および再確認した上で、ラットにおいて前処置として施行した2日間の短期絶食が、この亢進を抑制し、予防的な効果を示すかどうかを調査した。その結果、非絶食非虚血群、非絶食虚血群、絶食非虚血群、絶食虚血群において、結紮開放後2時間目における糸球体ET-1産生(in vitroで4時間培養:pg/mg protein)がそれぞれ、4.33±1.37、7.54±2.45、4.65±1.43、4.00±1.07、TxA2産生(60分間培養:TxB2を測定:pg/mg protein)がそれぞれ、166.2±78.9、685.0±158.9、217.1±64.8、319.4±112.0となり、絶食群で産生能亢進が共に抑制されることが明らかとなった(two-way ANOVAにて交互作用がそれぞれp<0.001、p<0.05)。また、結紮開放後24時間目においても同様な傾向が認められた。これらのことは、カロリー制限の極端な形態である絶食が短時間行われた場合には、直後に急性虚血性腎症となった際にこれら2種類の腎血管収縮性ホルモンの亢進が抑制されうることを示している。従って、短期絶食が急性虚血性腎症に対してある程度の予防効果をもつ可能性が示唆され、これは衛生学・予防医学研究において、1つの有用なモデルとして応用しうるものと思われた。いうまでもなく絶食は100%カロリー制限であるが、蛋白摂取も同時に制限されることになる。これまで短期の蛋白制限の効果は余り知られていないが、今回の研究結果をより鮮明にするために、今後の課題として蛋白摂取量を同じにしたカロリー制限下での調査研究を行う必要があるものと考えられた。
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