胆嚢がんの原因について過去13年間研究を重ねて来た。その成果の一つとして、我々はヒト胆汁のブルーレ-ヨン処理で突然変異原性を証明した。この研究は、胆嚢がん死亡率の高い新潟県の主として胆石症患者から得た胆汁についての変異原性であり、低い地域の胆汁の変異原性については不明であった。昨年度は、本症死亡率の最も低い高知県で得た胆汁について検討を行い、若干の知見を得た。 今年度は世界における日本の特徴を知るべく、世界で最も本症死亡率の高いチリにまで研究領域を広げ、比較検討を行った。比較可能性を高めるため、胆汁採取は女性の胆石症患者のみとした。 日本では本症死亡率の高い新潟県、低い高知県、チリではテムコ市における女性の胆石症患者の手術時に、胆摘胆嚢から胆汁を採取した。胆汁は従来どおりの手法で処理したが、胆汁は現地でブルーレ-ヨンに吸着し、郵送されて来たものをAmes法(TA98+S9mix)で分析した。テムコ市で24例、新潟県(新潟市)で26例、高知県(高知市)で26例を収集した。それぞれの平均年齢±標準偏差は52±15歳、54±11歳、58±11歳であった。 テムコで突然変異陽性を示す胆汁は24例中20例(83.3%)、新潟では26例中21例(80.8%)、高知では26例中5例(19.2%)であった。テムコと新潟の陽性率は変わらないが、復帰突然変異コロニー数で見た場合、それぞれ128±92(平均±標準偏差)、62±14、66±13であり、テムコが極めて多いのが特徴である。また何れの地域にあっても、加齢とともに変異陽性率が増加した。
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