研究概要 |
(1)水環境中の変異原性物質捕集方法の比較検討: ブルーレ-ヨン(BR)懸垂法の定量性を中心に検討した.Benzo(a)pyrene(BaP)を標的物質とした場合,BR懸垂法は,Sep-PakC18に24時間で1L持続通水して捕集したBaP量の、0.4倍(静止水中)-19.9倍(強く攪拌した状態)が吸着回収され、水流強度が強いほど回収量が多くなった。このことは、異なった水域での測定値を比較する上で、水流強度を考慮した回収量の補正が必要であることを示している。日本環境変異原学会(第23回大会・1994年・静岡)で報告。 (2)水流強度の簡易測定法: 試作した石膏球を水中に24時間懸垂した際の溶解減少量と、電磁式水流計で測定した水流速度の24時間平均値との間には、よい相関が認められ、石膏球の溶解減少量の測定は、水流強度の簡易測定に効果的であることが分かった。 (3)環境水域で使用できる携帯ポンプの開発: 市販のペリスタルティークポンプをバッテリ-駆動に改造した。このポンプでSep-PakC18に環境水を24時間持続通水することにより,BaPなどの変異原性多環芳香族炭化水素濃度を、時間平均値(TWA)として測定する方法を考案した。第29回日本水環境学会(1995年。広島)で報告予定。 (4)BR懸垂法での捕集量の水流強度による補正: (2)で検討した石膏球をBR懸垂法に併用し、環境水中から捕集されたBaP量(BR-BaP)と石膏重量減少量(W_O-W)を測定した。一方懸垂した水域でのBaP濃度を(3)の方法でTWAとして測定し、このTWAと(BR-BaP)/(W_O-W)^nの関係を解析した。電磁式水流計での測定値が0-4.16cm/secの水域(通常の沿海)では、nの値を0.9-1.5の範囲にした時、TWAと(BR-BaP)/(W_O-W)^nの値がよく相関した.このことは,BR懸垂法での捕集量と水流強度の簡易測定値(石膏球重量減少量)から、環境変異原性物質のTWA近似値を算出しうる可能性を示している。この点は平成7年度に、環境水における測定例を増やして、妥当性を確かめる予定にしている。第29回日本水環境学会(1995年・広島)で報告予定。
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